6人制 大会で、5人・・・

JSCクリスマスカップU-7大会に参加させて頂きましたが、 インフルエンザで参加できる1年生が4人だけ。そこに小さな年小を加えて5人で大会に挑むことになった。たった5人・・・彼らは、この状況を面白いと思えるのか?無理と思うのか?が問われる。

会場に集まった彼らに、まず問いかける。「今日、君たちは会場を3つのことで驚かせる。1つ目は、整列すると6人制なのに5人しかいない。2つ目は、よくみると小さくかわいいのが混じっている(年小)3つ目は、サッカーしたら、めちゃめちゃ戦う!全員が、仲間は助けるし、頭が動き続けて勝ちを目指して戦っている。

1つ目と2つ目は、整列さえしたらみんな驚く。でも、3つ目は、君たち次第。このメンバーで会場を驚かせてきて。」

彼らは不敵な笑みを浮かべている。やる気らしい。予選1試合目から会場を驚かせる圧勝を魅せる。そして、予選4試合を3勝1分で勝ち上がる。

この1年生4人は決して最初から凄かったわけではない。1人は小さいときから脚が速く、蹴れるため、最初の頃からゴールを量産して活躍してきたA君。でも、あとの3人は、サルヴァに入った頃は静かで闘争心もなく、テクニックとよべるものもない。A君にパスと言われれば従ってしまうようなタイプ。しかし、この1年で大きく成長し、堂々とした戦いを魅せる。


▼ 自然体だからこそ

その成長を象徴する場面が、決勝トーナメント準決勝で見られた。ここまで合計130分を5人で戦い抜いてきて、かなりの疲れもある。

そんな中、相手が抜けだし、カウンターのピンチ・・・それをB君が懸命に後ろから追いかけ、スライディングでシュートブロックして、ピンチをコーナーキックに逃れた。そこに戻ってきたA君が、立ち上がるB君とハイタッチ・・・。そして何事もなかったかのように、コーナーキックに備える。

まるでスラムダンクの、天才 流川が素人 桜木とハイタッチしたような場面。その流れが全て自然。

ピンチの時はダッシュで戻って、シュートブロック。
活躍した仲間を称えて、ハイタッチ。
コーナーは直ぐにマークにつく。

そんな風に言われていては、たぶんこの時間帯にあんな自然な行動はできない。勝つ為に、仲間の為に、自分の全てを出す。既に顔つきは7歳ではない。


人を成長させる2つの状況

予選リーグ4試合。決勝トーナメント4試合の合計160分を5人で戦い抜き優勝!この160分、本当によく走り戦い抜けた理由は2つあると思っている。

1つは、人に言われた行動ではなく自分の意志だから。

もし、攻めろ。速く戻れ。と言われ続けていては、彼らは疲れ果てていただろう。でも彼らは自分は仲間を助けて勝つという明確な意志を持ち続けていた。指導者はその意志を持続させるだけ。それは駅伝でタスキをつなぐ選手の心境に似ている。1秒でも早く、仲間に繋いで力になる。

そしてもう1つは、小さな年小の存在。

彼ら1年生は自分より小さな年少がいることにより、自分が負けるわけにはいかないと、強くなろうとして戦っていた。古い映画の話で恐縮だが、映画エイリアンでは、少女が過酷な宇宙コロニーでたった1人生き残っていた。その時、助けられた少女は小さな人形を抱えていて、この少女は自分が泣くと人形が不安になると思い、極限状態の中、平静を保って生き残っていた。そこには、自分より弱いものを守ろうとする決意は、人を強くすることが描かれている。

ピッチにエイリアンはいないが、ピッチの中で助け合えるメンバーはこの5人だけ。そして1人は年小。指導者は見守るだけで、本質的なところは助けてあげることはできない。この状況を理解し、自分たちで戦い抜いた彼らのことを、人としてとても尊敬する。