▼ 相撲でも「駆け引き」が育つ

U-8大会の合間に1年生2人が相撲をはじめる。最初は土俵から押し出すための戦いで、どちらも負けん気が強いので譲らず押し合い。押し合いのみの戦いの結果、足腰の強いA君が6連勝。連敗中のB君に、

「相手が頑張って前に押してくる力を、サッと交わして引っ張り倒すとどうなる?」とヒントを与える。B君がA君の力を利用して遂に1勝。たまたまと言わんばかりに、また突っ込んできたA君を、同じ手でB君3勝。

ここでA君は気づいた。次からは押すフリを入れてくるなどして、押しと引きの駆け引きが始まる。数戦戦った後に、「前か後ろに踏ん張る相手の足をひっかけたらどうなる?」と両者に聞こえるようにつぶやいてみる。

押し。引き。前に足を掛ける。後ろに足を掛ける。駆け引き要素が増えて一進一退の戦いが10戦ほど続く。観戦していると、相手のどこを掴むと有利になるかを考えるようになり、組み手争いに発展。もはや柔道のような戦い。

2人だけで20試合ほど熱中してやっていると、他で遊んでいた全員が参戦してきて勝ち残り戦を開始。10連勝する横綱1名。7連勝する大関2名。観察していると、それぞれのサッカーのプレーに似ている。

足の速さでサッカーをしている子は、相撲でも突進が多く一か八かの玉砕。パワーを使う子はそれに頼りがち。駆け引きが上手い子は相手を見切って相撲をしているし、人の相撲を観察して自分の戦いに活かして戦い方を進化させていく。「闘争心を持ちながら、冷静に相手と駆け引きする」ことが勝負を分ける。競技に関わらず、人と人が勝敗を競うと、勝つ為の工夫が生まれ、駆け引きに発展する。

「相手に勝つ為にどうするか?」

を考えて、脳が回転している子が、短時間で進化し相手を上回る駆け引きを魅せる。技術は、脳が見えたことを実現するための手段。

この後のサッカーの決勝戦、1年生のA君とB君は、押すふりして引きこむ。相手を食いつかせたら、行く。相手と組み合わず、遠くみて蹴るフリしてドリする。・・・etc。駆け引き満載で1年生ながら、ゴールを量産していました。